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イクメンが話題となる一方で、男性が長く会社を休むことにまだまだ抵抗がある現代。仕事を長期間休んだり早く帰宅することは、そのときだけ見ればマイナスかもしれない。しかし長期的な目で見たらメリットもあるはず。営業の最前線で仕事をしながら育休を取得したイクメン?徳倉康之さんに話をうかがった。
 徳倉康之さん(34歳)が初めて育児休暇を取ったのは、2009年。当時は、大手日用雑貨メーカーで広域量販法人営業を担当しており、会社には育休制度はあるものの、男性の取得率はゼロ。妻?美智子さん(34歳)の妊娠がわかった直後に、男性の育休取得が可能なのか上司に何気なく聞いてみたときの答えは、「取って戻ってきたら席ないぞ」だったという。
 そもそも徳倉さんが育休を取得しようかと考えたきっかけは美智子さんのキャリアだった。
 「妻は医師で、当時、専門医の試験を控えていました。調べてみると産後4ヵ月で復帰するとその試験を受けられる。合理的に将来にわたっての収入を考えたら、ここで妻が復帰したほうがいいという話になり、じゃあ僕も育休を取得しようと」
 入社以来、営業として長時間勤務は当たり前のモーレツサラリーマンだった徳倉さん。しかし、身体を壊したことをきっかけに働き方を見直したニューバランス ランニングシューズ。心身に過度の負担をかけずに働くためには何を省いて何をするべきか考え、「上司の指示は、いつまでにどのようなクオリティのものが必要なのか確認する」「営業相手に合った簡潔な資料を作る」ことを心掛けた結果、営業成績はトップとなった。
 そんな中の突然の育休宣言。妻の美智子さんも含め、最初は止めたほうがいいという意見ばかり。会社ではさらに風当たりは強く、昔の上司に「何考えてんだ!」と怒鳴られたこともある。しかし、めげることはなかった。
 まずは、会社の就業規則を徹底的に調べた。話し合いの場ではそれを提示し、人事?総務には、「くるみんマーク」(“子育てニューバランス 574支援をしている企業”と厚生労働省に認定を受けたときにもらえる)取得の意義など、企業のメリットを説明。上司には、自分と妻が働いたときの生涯収入のシミュレーション表を作り、説得。「営業だけに、数字で見せられるとYESと言わざるを得ない説得力があるんですよ」と笑う。そして6ヵ月の交渉を経て、美智子さんの職場復帰に合わせて8カ月間の育休を取得した。
 「とにかく最初は大変で、仕事のほうが断然ラクだと思いました。思いどおりにならず苦労しましたが、いまから考えると、その経験が非常に役立っています。育児も仕事も目の前の相手とのコミュニケーション力が問われます。育児を経験するとその能力が飛躍的にアップするんです」
 その後、育休より復帰。元の部署に戻ると、育休前の仕事のやり方に加え、育児で身につけたスキルを発揮。クライアントは変わっても営業成績が変わることはなかった。復帰後はとくに時短勤務はしなかったが、毎朝8時前には出社して、社内での業務をこなし、昼からは営業先を回り、家族と夕食をとれる時間に帰宅することが多かった。
 2011年、2度目の育休を取得。里帰り出産をせずに第二子を産んだ美智子さんのケアと長男の世話のため、産後2カ月間の育休だった。このときはすでに会社の風土は変わり、育休も取りやすくなっていたという。
 「最初は反対していた実家の父も、いまは『よかった』と言ってくれるなど、周りの評判はとてもいい。おそらく、僕や妻、子供との関係がとてもいいからだと思います。子供に手がかかる時期はほんとうに一瞬。その頃を一緒に過ごせたことは自分にとってもかけがえのない時間ですし、何より妻とのパートナーシップのうえで良い選択だったと思います。この期間を妻任せにしてしまう人が、のちのちの熟年離婚につながるっていうデータもあるんですよ」と笑う。
 2回の育休を取得、職場に復帰したことで仕事に対する意識も大きく変化した。営業として成績を上げる以上に、男性が子育てと仕事を両立できる環境を作っていくことにやりがいを感じ、父親を楽しむ?活動を推進するNPO法人ファザーリングージャパンに転職をした。
 「育休を取得するには、とにかく一人前になっておくことが大前提。そして、つき合いのある他社の人たちからも認められる人材になることです。そうすれば、戻る場所はちゃんとあります」
 徳倉さんも、戻る場所があると思っていたから育休取得に踏み出せた面もあるという。育児に参加しながら働くということは、優秀なビジネスマンの証でもあるのだろう。
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