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徳冨蘆花に、『外交綺談』という著書がある。翻訳の短篇集であったような気がする。その中の一つに、白い糸をテーマにした物語があった。何んでも、ある外交官が、夜会帰りの外套の背中に、白い糸がついていたのを、ある婦人が「あなた、糸がついておりますよ」といって、取りすててくれた。さて、会場を出て、その外交官が、モスコーの通りを歩いてゆくと(この物語の舞台はロシアなのである)うしろから、人が近よって来て、その外交官を刺そうとしたが「おや、白い糸が無い」と云って外交官を刺すのをやめて立去った。……
つまり、白い糸を外套につけた外交官を殺せという指令をうけた虚無党員が、それとめざした外交官を刺殺ニューバランス スニーカー さしころ そうとしたところ、白い糸が無かったので、刺殺さずに立去ったというだけの話なのである。  僕がこの物語を読んだのは、中学の初年生ごろのことであって、その後、繰返えして読んだことはない。だから、おそらく物語の筋も、原作とは違っているかもしれない。  白い糸を取りすてた婦人は、あるいは、外交官の恋人であったかもしれない。又、その外交官は、――今の僕には記憶はないが、何か重大な使命を持った人物だったかもしれない。  それに、第一、それだけの筋では、探偵小説にはならない(その『外交綺談』は、探偵小説集なのであった)
 それにもかかわらず、この物語が、三十年以上も、僕のアタマにつき纏っていて、何か小説でも書こうとすると、きっと、アタマの隅へ浮んでくる。  何故だろう?  そんなに、僕の創作の圏内へ顔を出す物語なら、その著書をもう一度手に入れて、読返しもっとハッキリとその筋を掴んだらよいではないか!  ところが、幾度となく、その『外交綺談』を、神田辺の古本屋や、夜店の見切物の古本屋で見かけるのであるが、買おうともせず、読返そうともしない。
 何故だろう?  思うに、これは、少年時代に楽しく経験した、遊戯や、風景や、初恋などを、大人になってから、もう一度経験することによって、幻滅することを恐れるあの心理と似ているのであろう。  さて、これはこれでよいとして、こう書いて来た順序として何か尤 もっと http://www.newbalancejptop.com/ もらしいことを云って、この茶話のしめくくりをつけたいものだ。  こんなことを云おう。―― 「外交官などというものは、天下国家に関する、重大なことばかりに、日夜、アタマを使っていて、案外、こまかいことには不注意らしい。昔はそれでよかったろう。しかし、国際情勢がこう複雑怪奇になった今日ではそれではいけない。やはり、一筋の白い糸にも注意していただいて、婦人に取りすてて貰う前に、自分から取りすてて貰いたい。まして、赤い糸などはね」と。――
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